定理1・2にて地層と中心軸についてふれましたが、いずれも、自然を尊ぶという原則の下(もと)にあります。
その為に必要なことは、周囲の地形です。お金を出して買った土地といえども、
その土地にご縁を頂き、「住ませていただく」ということであり、
その「感謝の気持ち」は周囲の自然の流れを阻(はば)むモノであってはならないのです。
図形計量の詳細は、難しくなりますので、ここでは省きますが、
特に、山脈と水脈(道路は水脈の展開と考える)との流れを見、その「流れ」をデザインの基本定理とします。
上図で紹介しているのは、黄金比・白銀比をデザイン化する為には、その数値的な展開を直接図面化するのではなく
その比をもつ自然物(貝殻・サボテン)などをサンプリングとして成形することです。
その理由は、自然物が絶妙な誤差をも抱き込んで既に形態化されているからです。
例えば、黄金比を象徴するものとしてオーム貝が取り上げられますが
そのラインを計量化すると必ずしも、精緻な寸分違わない黄金比を展開しているのではありません。
微妙なズレがそこにありますし、貝殻の内部構造には異質な突起物があります。
これは、ここで紹介する塀に限らず、名刺デザインや看板デザインなどにも言える事ですが、
このように、その地域の自然物を忠実にサンプリングすることで、周辺環境との同調性が高くなるのです。
これを「同律感応の原則」と名付けています。
特に「塀」は周辺との「境界」を意味し、
境界は次元の狭間を象徴するものですから、ここにこそ理を極める必要があります。
こうして成形された塀の住人は、「心」を塀を通して、自然物に心を通わす事が出来るようになり
結果として、生活スタイルのみならず、運気まで変えてしまいます。
これは塀内の住人のみならず、周辺環境の気まで調律し、正常化します。
塀は、境界というその特性から、塀の外にも影響を与えるのです。
因みに、ここで紹介した川野邸のご主人によると
「毎日、リビングから塀が見えます。夜遅く帰っても必ず塀を見ます。
落ち着くんですよね〜。そこに、自然を感じるんです。
そして、その日その日の自身を見つめ返しています。もう日課のようになっています。」
ということで、実際、運気に大きな変化が出ています。
このように「同律感応の原則」を踏まえた造形物の意味はとても深く
「塀」に限らず、公園などのオブジェにも、その地域の象徴となり、言葉を超えた調整力を発揮します。
人の心は、天地自然との感能力を強くし、穏やかになり、犯罪抑止にもなるのです。
いずれにしても、「自然の形を尊ぶ」が基本です。
現代では、工期短縮・施工効率重視の発想から、形態は、自然に本来ない直線化の方向に向かい、
地の気を閉塞させるアスファルト・浄化機能を失った河川工事などが蔓延し、
自然から遠い環境が多くなりつつあります。
せめて、オブジェだけでも、デザイナーの感覚だけでなく、自然を尊んだ造形を期待する次第です。
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