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自然に学ぶ

 

安部浩之作品No,3
                                                                        文・Phot,kohsi

 

この講座は地球環境を尊び、自然界に学ぶ、 ということを大きなコンセプトとしていますが、

それは、人の本来の姿がその視点に立つことで浮き彫りにされてくると考えるからです。

地球上の多くの生物は,多様な相互関係を維持しながら共存して複合生態系を形成し、

想像を絶する多様な機能を有しています。

特に、40億年ほど前に誕生した生命は、 度々の大量絶滅を通して、誕生→絶滅をくり返し、

淘汰されながら地球環境に適応してきた精鋭です。

例えば、昆虫が地球上の全生物種に占める割合は8割にも及び、

現在確認されているだけでも100万種以上の昆虫が生息しています。

さらに年間3000種以上が新種として発見されているという現状です。

手塩にかけて地球は今の姿に至っているのです。

蟻1匹、創れない 地球科学は、ようやくその端緒につこうとしたばかりです。

 

ですから、我々人間は、個々が日々の生活の中で、 うやうやしく・・・

様々な生命現象を観察し、生活を見直す必要があるのです。

今、自然界の中にこそ、生態系を考慮したハイテク技術がひそんでいます。

最近では、

   ・蓮の葉の表面構造から水着の繊維が生まれたり

   ・貝の成分から接着剤が生まれたり

   ・アメンボの構造がロボット技術に生かされたり

と、既にある生命現象からヒントを得た研究・開発・製品化が始まっています。

また、 昆虫の生体機能を研究し、生活に役立てようとする、

「インセクトテクノロジー(昆虫技術)」 という分野や

自然の叡智を活用した技術革新「バイオミミクリー」や「ネイチャーテック」いう分野も生まれています。

 

さらに、植物が虫の力を借りて受粉しているように、個の現象を超えて、

それが全体として、どのように連鎖して、 複合生態系が成り立っているのかを

地球レベルでグランドデザインしなければなりません。

そういう時機にさしかかっています。環境免疫学の願いもここにあります。

その時にこそ、あるべきリサイクルの姿や環境保全の姿が見えてくるのです。

市場拡大・拝金主義の環境保全では、つじつまが合わない状況に来ているのです。

 

ですから、少なくとも、今日このようにして、この文に接したあなたは

明日からでも、まず地球の自然を見つめる時間を持って欲しいのです。

そして、なぜ?

が起こったとき、追求して欲しいのです。

それこそが地球人に求められるスタディです。

 

そして、不思議と抱えている疑問に対して

自然がメッセージを残してくれる・示唆してくれる。

そういう風に出来ています。

 

ある真夏、炎天下の出来事

  屋外に放置されていたクルミパンが真っ黒に

  よくよく見ると、蟻がすきま無くたかっている。

  その光景に一瞬、ゾッとした

  術(すべ)もなく

  とりあえずビニール袋に入れて、封をして

  2.3日、ついそのまま・・・・

  どうなったと思う?

  蟻の姿はなく、袋の中はパンのみ

  不思議だ、逃げ出した穴もない、

  どこに消えたのか?

  もしや?

  とビニール袋をあけてクルミパンを2つに割ってみると

  なんと蟻は

  点在するクルミの周りに食物庫エリアをつくり、

  それぞれを通路でつなぎ、メイン通りを造り・・・

  ビニール袋の中に、見事な生態系を造りだしていたのである。

  何という適応能力だろう

  何という「けなげさ」だろう

  私はこみ上げるものを止めることが出来なかった

  私は、蟻を袋から、解き放ち、

  パンをちぎり、蟻の巣と思われる所に、まいてあげた。

  蟻は動揺する様子もなく、黙々とパン切れを地中の巣に運び始めたのでした。

  私は、あたえられた環境に、

  ただ黙々と命の限りを尽くしている蟻に合掌したのでした。

 

最後に、生物の構造を習って生まれた技術・商品を一覧にしました。

紹介サイトともリンクさせましたので、関心のあるものだけでもご覧下さい。

学びの一助になればと思います。

自然界と産業化

  自然界 産業化内容 開発者 紹介サイト
モルフォチョウの発色 光角度で、色が変わる織物 木下修一(阪大)クラレ

・NTT CSR ・環境goo

    着色料を使わず色を楽しむ繊維 テイジン  
アワビの接着力   J・H・ウェイト博士

・NTT CSR

イガイの接着力 海の接着剤  

・NTT CSR

シカの皮 織物(特に感触面)・商品名 エクセーヌ 東レ

・NTT CSR東レ経営研究所(PDF)

蓮の葉の表面構造 撥水繊維・商品名 マイクロフト レクタス テイジン  
  蓮の葉の表面構造 外壁用塗料 独 ストー社  
シルク ナイロン(低レベル)    
シルク ・商品名 シルドーム テイジン ・帝人(株) ・NTT CSR

生物ロウ ・口紅・クレヨン・CD・チョコレート    

モンシロチョウ ・ガンを死滅させる物質   ・虫ブログ
10 サシガメ ・脳梗塞を防ぐ物質    
11 玉虫の発色機能 ・ステンレスなど   ・Mugen ・環境goo
12 イエバエの個体機能 ・高速家畜糞尿処理システム    
13 カブトエビの機能 ・無農薬米作り   ・東京農大(昆虫学研究室)
14 フクロウ ・空気拡散羽根で防音、パンタグラフ JR西日本 ・JFS
15 カワセミ ・新幹線の形(空気抵抗小・防音) JR西日本 ・JFS
16 セミ ・ミウラ折り(羽化時の羽根たたみ)   ・自然大好き
17 タケノコ ・タケノコ挿し(新聞の陳列)    
18 フナクイムシ ・シールドマシン(掘削機械) アイサムバード・ブルネル ・東京ジオサイトプロジェクト ・早稲田大学
19 オジギソウ ・内視鏡 オリンパス  
20 サメの膚 ・水着(整列した凹凸) ミズノ・スピードI(英) ・総合科学技術会議(PDF)  ・読売新聞
21 クモの糸 ・繊維(各種ケーブル)   農林水産技術情報協会
22 カウロバクタークレセンタス ・接着剤   ネイチャーテック
23 キリアツメゴミムシダマシ ・吸水能力   ネイチャーテック
24 ナタデココ ・温度に左右されないセルロース(繊維) 京都大学 京都大学生存圏研究所
25 アメンボ ・ロボット 中村太郎・中央大学 中央大学中村研究室cmun
26 こんにゃく石 ・凌震構造 九州大学 九大院人間環境学研究院
27 ミミズ ・ロボット 中村太郎・中央大学 ロボナブル
  カイメン ・光ファイバー ルーセントテクノロジー社  
  ヤモリ ・足指の粘着力を模倣してテープ マンチェスター大学  
  アワビの殻の真珠層 ・低温で倍の硬度のセラミックス 米サンディエゴ国立研究所  
         

 

 おすすめ文献

『昆虫テクノロジー研究とその産業利用』  68.250円 ・監修 川崎建次郎,野田博明,木内信((独)農業生物資源研究所) ・詳細・購入はココ 研究員向け

『バイオミメティックスハンドブック』 ・編集代表:長田 義仁 ・詳細・購入はココ 

・『昆虫に学ぶ』 定価:2,100円 ・木村 滋 著 ・詳細・購入はココ 一般会員向け

・『複合微生物系の産業利用と新産業創出』 68,250円 ・監修 倉根隆一郎 ・詳細・購入はココ 研究員向け

・「カタツムリが、おしえてくれる!ー自然のすごさに学ぶ、究極のモノづくり 」1,680円(赤池学著 ダイヤモンド社)・購入・詳細はココ 一般会員向け

・『不思議な生物現象の化学』 2.940円 上村大輔/編 購入・詳細はココ 研究員向け

 研究者・研究機関

  ・長島孝行(ながしま・たかゆき)  紹介サイト 

東京農業大学 農学部助教授 ・シルク研究の第一人者
 1983年 東京農業大学大学院農学研究科修了(農学博士)。日本学術振興会奨励研究員、高校・予備校などの講師を経て、1990年より東京農業大学農学部助手。1996年 東京農業大学農学部講師、2001年より現職。日本野蚕学会評議委員、第19回日本科学技術フォーラム委員、千年持続 学会設立準備委員など。

  ・中村太郎(なかむら・たろう) 紹介サイト 

中央大学、ミミズからロボット、アメンボかロボット、カタツムリからロボット、など多くの実績を持つ。専門は、ロボティクス・メカトロニクス,機械システム,知能機械学。人との共生〜生物・生態を規範としたロボットを目指している。

  ・昆虫機能開発研究室

 

 おすすめ番組 

 ● ネプ理科 TBS毎週火曜日23:55〜(出演者 :ネプチューン)

 ● スカパー、サイエンスチャンネル インセクト・テクノロジー  〜昆虫機能研究・長島孝行〜

    ※その他、上記、一覧(自然界と産業化)関係で新情報がありましたらお寄せ下さい メール

 

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