top 総目次

 

助け合いの生物学

安部浩之作品No,080807
                                                                                                    文・Phot,Kohsi

 

戦いの生物学から助け合いの生物学へ

製作7年、ロケ地200ヶ所、撮影フィルム7000時間という膨大な時間と経費を費やした

海洋ドキュメンタリー「ディープ・ブルー」の成功

(国内 興収11億円、観客動員約80万人、DVD20万枚を突破)以来、

 

  「ブルー・プラネット」 しかり、

  「ブルー・オデッセイ」しかり、

 

また、海洋TV番組などと、海洋ドキュメントブームが続いています。

そして、これら企画製作の背景には、淘汰・戦いのイメージが込められています。

例えば「ディープ・ブルー」の完全版といわれる「ブループラネット」のタイトルコピーを見ると

「勝利への進化」が統一テーマで、

40億年の戦い・ 繁殖の不思議・動物界の生存競争・

絶えることのない生存競争。・・・・

その映像もこれまで見たこともない衝撃映像の連続で、

驚きと共に、生物の歴史があたかも、

弱肉強食・淘汰の歴史の連続であるかのような感覚になるのです。

しかし、そうでしょうか?本当に生物は

 「戦い」の結果、生き残った勝利者だけの世界

と、とらえて良いのでしょうか?

短視眼的に見れば確かに、生物の歴史は、強い生物が弱い生物を食べ、

「淘汰の歴史」のように見えます。

 

しかし、より鳥瞰して歴史を眺めるほどに、そこには「戦い」ではなく

 

 命を進化させるための助け合いの生物史

 

であること気づかされるのです。

簡単には、生物の歴史を紐解かなくても、現状を見れば気づかされます。

例えば、世界最大級の生物シロナガスクジラ(体重200トン)は、

オキアミをエサとし、1頭が1日に4000万匹食べます。

この事実を前にオキアミが「負けた」、と解釈すれば、

それは淘汰の歴史となるでしょう。

しかし、そのオキアミ4000匹が、

その日のシロナガスクジラを「生かした」と解釈すれば、

それは命を捧げ「クジラを助けた」ということになります。

つまり、一般に言う食物連鎖は、助け合いの姿そのものだということです。

 

また、ミクロコスモスを見つめることでも「助け合いの生物史」は明かです。

現代の細胞生物学の分野では、タンパク質や核酸・ミトコンドリアなど

細胞同士は連携しあい、補完し合い、

を巧妙にシステム構築していることを明かしています。

その細胞群で成り立つ生物が、どうしたら「戦い」を元とするでしょうか?

それは人間の短視眼的な、勝手な解釈でしかない。ということです。

ですから、命というものを見つめる時に、時間的にも空間的にも、

ずっと広げて見つめる必要があるのです。

それだけで、生物の助け合いの姿が横たわっている事を知るのです。

 

ところが、そういう生物の中で、人間を見つめると、

そこには、

地球が・・・・・人類が・・・

ではなく、

自分が・・・・・

しかなく、自分が生き残るために「利己的・保身」という低次元の生き方に満ち、

「保身」の群れ社会を形成しているのです。

これを破壊状態の社会というのです。

私達は今こそ、生物史を「戦い」から「助け合い」に切り替えた視点で見つめ、

生活の礎(いしずえ)としなければならないのです。

 

群れる生物に学ぶ

特に、生物の中でも、ミツバチ(関連ページ)や

アリ・鳥・魚・馬・コウモリ・ヌーなど群れる生物の中に、

私達人間が学びとらなければならない多くの教訓なり

智慧がひそんでいます。

なぜなら、群れ行動の進化形が人間の行動基盤であり、

人間社会は、本来、

共存・共栄を促進するメカニズム

のうえに成り立っているからです。

 

最後に1つの例を紹介します。

これまで私達は、時として

 

競争→勝利のイメージ

を、誕生の始まりである精子の活動に求める事がありました。

つまり、何億という精子の中で、

競争に勝利した1つなり数個が卵子と受精し・・・・

生命の誕生から、「人類は競争の中にいる」と理解してきたのです。

違います。

すでに説明した通り、キーワードは「群れ」です。

5〜100匹と群れて泳ぐ事で、方向性を定め、

泳ぎのスピードアップを図っているのです。

魚も同じです。群れる方が早いのです。

多くの精子が至近距離で突進する姿は、

あたかも競争しているかのように見えたでしょう。

しかし、そうではなく、「群れ」て助け合い、目的地が見えると

「よし、お前、最後は任せたぞっ!!」

と見事に、涙ぐましいまでの、

 

助け合いのチームワーク

 

がそこにはあるのです。(※下記注「精子の協力体制」)

競争の結果誕生した私達の命ではないのです。

共存共栄、助け合いの結果誕生した、1人1人の命だという事です。

 

そこを把握いただけたら、その事を毎日の日常生活の中でどう生かしていくか、そこが肝要です。

ぜひとも、家族で、学校で、社会で、「群れる」事の意義をそれぞれに問うて見てください。

よろしくお願いします。

 

※ 「精子の協力体制」
これについては、イギリスシェ フィールド大学のSimone Immler博士らが、ラットを用いた研究を通して
明かにしたもので、論文タイトルは「Rodent sperm work together for better results」 詳しくは
ココ
関連する他参考サイト

現在、「助け合いの生物学」として様々な事例を募集しています。お気づきの点や情報などありましたら、ぜひ、下記メールよりお寄せ下さい。このページにて紹介させて頂きます。

 

ウィンドウを閉じる  

top 総目次