音・色・形の共感覚 −共感覚は人の創造力を高め、豊かな心を創る−
共感覚とは 「共感覚」(きょうかんかく、synesthesia, synæsthesia)という言葉があります。 共感覚とは、ある刺激に対して通常の感覚だけでなく、「異なる種類の感覚」をも生じさせる感覚 を言います。例えば、 ・7という文字に紫の色を感じたり、 ・音階のミの音に緑色を感じたり、 ・物を食べると形が浮かぶ などです。そして、この感覚を持った人を「共感覚者」と言い、10万人に1人とも言われています。 しかし、それは決して一部の人だけに起こる現象ではなく、大同小異、全ての人にその感覚は成立して います。ただそれが意識のレベルにあがるか否かの違いでしかありません。
感覚器官は相似展開している 下図をご覧下さい。
音・色・形の相関を示しています。 すでに、 人間は、地球のごく一部しか見えない(クリック)で、色について触れましたが、 「色のみならず、音も、形も・・・」と全ての領域を人間は知覚できる訳ではありません。 上図の通り、 ・「色」であれば、760nm(ナノメータ)〜380nm
人が目で見ることのできる光、いわゆる可視光は約380nm〜780nmの波長で、その波長域によって、それぞれの色を見 ・「音」であれば、20HZ(ヘルツ)〜20000HZ 音とは、空気の振動(波)です。音は空気中を一秒間におおよそ三四〇メートル進みます。 ・「形」であれば、0次元〜4次元(含 時間) (通常、私たちの住む世界は縦横高さの3つの向きへの広がりをもった実3次元的な空間だととらえられているが といったように、限られた領域しか認識できません。 大切な事は、命の全ては連鎖しつつ相似形で展開していますから、それぞれの感覚の知覚領域は、 他の感覚器官と相似展開している。ということです。つまり上図の4つの縦軸は横に相互リンクしている ということです。 現代の神経科学においては、視覚中枢と聴覚中枢が通じているから(下記注1)となりますが、 それは一端であり、具体的には、、音・色・形は体内水(特にリンパ液)を通じて、連鎖しているのです。
簡単に言えば、「色」にマッチした「音」、「音」にマッチした「形」があるということです。 「色を見て形が浮かぶ」、というような極端な例でなくても、身近な例で言えば、次のような問題は、 かなり高い確率で共通回答が導き出せます。
【問1】ここに「○」と「△」の2つの形があり、名前が付いています。 どちらが「マイモ」でどちらが「チチ」でしょうか?
考えてみて下さい。回答の大半(9割以上)の人が「○」を「マイモ」と答え、「△」を「チチ」と答えるのです。 なぜでしょう?人はその言葉の響き(音)から、形を共通認識として想像しているからです。 さらに身近な例では、活字は創造力を高め、調整力を持つ(クリック)でも記した通り、 「甘い香り」 と言う言葉から人は、それぞれに、 「ハチミツの香り」であったり、「チョコレートの香り」であったり、「女性の香り」であったり、 と好みの香りを感じとっているのです。
共感覚は人の創造力を高める 以上、「共感覚」は万人に共通する機能だと、説明しましたが、 ではなぜ、人にそのような機能が付与されているのでしょうか? それは小タイトルの通り「創造力」を高めるためです。 レオナルド・ダビンチや宮澤賢治など、圧倒的に芸術家に共感覚者が多いといわれる所以もここにあり ます。つまり、絵を描きつつ、音を感じ、文字を書きつつ臭いを感じ・・・・・ という感覚があればこそ、その絵や文体が、見る人・読む人に、 視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚と五感をフル稼働して感動を与えるのです。 関連して、例えば、現在、はせくらみゆき氏(公式サイトはココ)の「胃腸に良い絵画」を眺め る事で、 胃腸を快癒させた。というような報告がありますが、これを単にヒーリングアートだから・・・・、 ということで短絡的に解釈するのは早計で、 「絵画を見て、その色と形に連鎖する各感覚器官が同調し、 あるべき胃腸の正常なリズムを転写、また神経科学的にはニューロンへの刺激が調整作用として 当該ホルモンを放出し、免疫性を高めた」 とも解釈できるのです。
共感覚と日常生活 さて、上図は、感覚器官のの相似形として「音・色・形」を横並びで示した訳ですが、この構図が即ち、 私達の心身全体(上図左)とも相似しているということです。すなわち、動(活性・遠心)〜静(鎮静・求心) の日常生活の運動そのものだという事です。 ですから、 ・赤∞低音域∞鋭角な物∞物質 ・青∞高音域∞丸い物∞精神 などは連鎖力が強い、ということになります。(下記注2) ここは、とても大切な視点です。上図の横並びの相関関係を理解するだけでも、 以下のような事が見えてきます。 ・就寝は「静」への入口であり、パジャマは青色で形は水玉(玉は小さいほど良い)が良い ・食品関係は「食べる」という行為であり、基本的に赤から黄〜緑までの暖色系・尖った形状が、 フィットし、結果的に、このマーク、図柄が拡散力を持つ。その意味からも、寒色主体だった乳製品 業界に、当時、斬新と言われたメグミルクのパッケージデザインは正解。 (メグミルク、及びナチュレについてはココ) ・瞑想は「静」への向きが強く、衣は濃紺や紫、無地(フラクタル原理により、詳しくはココ)が適している。 ・科学・研究・分析関係、また学習(勉強部屋)は、内に向かう力であり、緑から始まる寒色系・形は 放射状に伸びる形態が適している。 ・あるテレビ番組で、青いうどん・青いごはんを見せて、食べる気しないでしょ? と試食させ、青で食が進まなくなる理由を、ある脳機能学者が以下の通り分析した。 「私達の色に対するイメージは、生まれた時から、持っている訳ではないんです。 記憶によって創られていくんです。・・・・・」 というのは間違い。生まれた時から、食行為に相似する暖色系(上図)を食するように生態法則とし て既にある。が正解。この法則は動物には顕著で、生まれた時から食す物を心得ている。 ・気分が滅入れば、意図して赤い物を食べ、暖色系の色の服を着る。 ・男の子は青、女の子は赤は間違い(この発想は近年の日本特有のもの)それぞれの命の向き、 それぞれの時に応じて色が工夫できる。 等々、実に概略的な図ですが、ここからだけでも実に多くのヒントが隠されています。 あらためて図表と身の周りの音や色や形を照らし合わせてみて下さい。 家庭においては、カーテンの色やテーブルクロスの色、寝具の色・・・など多くの工夫ができます。 また 売れる商品パッケージ(色・形)やネーミング(音)開発も、単に過去データの分析の域をこえて、 天地自然を眺め、上図のように「かくあるべし」から始めることで本当に商品が喜び、 またユーザーも喜び、拡散力を持つ開発が可能です。そういう本物が評価される時代にきています。
共感覚を高めると心が豊かになる 何度も記したように、すべては相似展開ですから、 豊かな共感覚には「豊かな心」が育まれるようになるのです。 私事で恐縮ですが、先日、ある水関係の案内パンフレットに係わらせて頂きました。 私は、その事業主が、その地で、水関係の事業を営むことが出来る事を、 まず「感謝」をもって取り組んで頂きたいと思いました。 いろいろと既成のテンプレートを使えば早いのですが、あえて、その地域を流れる川のラインを 航空写真から忠実に写し取り、58°17分の角度でフラクタル展開し、パンフレットの背景にデザイン として鎮めていったのです。 そして、そのパンフレットから川の映像や川の音を感じとり「感謝」を新たにして欲しいと思ったのです。 事業主は、その主旨を、とても喜んで頂きました。 私は、こういう心遣いこそ、「心ある物づくり」と考えています。
たかだか、30年50年80年、生きた人知です。 おごらず、高ぶらず、謙虚になって、46億かけて、やっと形成された音・色・形を見るのです。 蝶の色、花の色、葉の形、川の形、鳥の声、波の音・・・・・・ そこには無限の叡智と命の躍動があり、五感の全てが連鎖するようになっています。 そして、有り難いことに、豊かな四季のある日本は、このヤマトの大自然の中で 暑さを感じ、寒さを感じ、木々の色の変化を感じ・・・・・・ と共感覚全開で感覚器官を養う風土があります。ルノアールやモネ、ゴッホが浮世絵を嚆矢とし、模写 した話しは有名ですが、このように、この日本には、世界が注目する伝統文化がひしめき、花開いてい るのです。 青々とした山々を見ては、少し目を閉じて 土や木々の香りを・・・木の葉のこすれる音を・・・・鳥の声を・・・・蝉の声を・・・・ 感じてください。 そして、この日本に生まれ合わせた事に感謝し、五感をフル稼働して季節を感じ取って下さい。 ここが、「豊かな心」の入口です。そして、ついに共感覚が熟成すると、他人の痛みを我が痛みとして 感じ、共有する方向に向かいます。 そして、喜びも悲しみも、喜怒哀楽の全てを日常生活の中で、共有していくのです。 最後に、共感覚 豊かだった、宮沢賢治が小学校二年生の時の有名なエピソードを紹介します。 一緒にメンコをやっていた友達が、荷馬車に指をひかれてしまい、血を流して失神しかかった。 それを見た賢治はその友人の側へ駆け寄って まるで自分がひかれたかのように痛がり 「いたかべ〜、いたかべ〜」と言いながら、 無我夢中で友人の流れ落ちる血に口をつけて傷口を吸ってやった。(『宮沢賢治』 佐藤隆房 冨山房 昭和17年)
【注1】それぞれの生活環境は時空の誤差を生じているから、個々に連鎖形態は百人百様、現代の神経科学が「共感覚」に統一見解・成果を出せないのは、個々の環境の違いに対する読み込みが無いため。 【注2】上図はあくまでも概略であり、音といっても実際は高音・低音のみならずそのテンポ・リズムも影響します。
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