人の幸せを祈る
 
靴を揃えて大和心(けじめの心)を育む
 

安部浩之作品No,110130
                    文・illust,Kohsi

 

これまで、日本文化の特質は、

 ・和の文化 ・わびさびの文化 ・国風文化(島国文化) ・恥(はじ)の文化(菊と刀「ベネディクト」)

 ・混交(ごちゃまぜ)文化

など様々な切り口で語られてきましたが、現象に潜在する性分に視点をおくと

結界・ケジメの文化

と言うことができます。

衣替え・祭り・季節の諸行事・地域行事・・・・・など

古来より「節目・仕切り・ケジメ」を取り込み大切にしてきたのです。

それは、この背後に、変化する自然(四季)や、自然を貴ぶ畏怖・尊仰がベースにあります。

そして、この「節目」は生活のあらゆるシーンで生きています。特に生活に密着する住環境を見ると


                                               書籍『和のデザイン』より

 ・塀、門扉。

 ・床の間を高くして、仕切り、掛け軸・生け花などを飾り、別次元を創出。

 ・廊下と部屋は敷居で高低差を設ける。

 ・柱が表に出て、面を仕切る

 ・襖・障子でカスタマイズ可能な仕切りを設置。

 ・部屋と外の間に廊下を設ける。

そして、決定的に大切なのが玄関であり、玄関で靴を脱ぐことで、ようやく次のステージである屋内に

入る事が出来ます。

西欧のように、土足のまま屋内に入り込む、に比べるとめんどくさい行為かもしれません。

しかし、靴をぬぐ→足もとにケジメをつける。

ということで、心をリセットしてきたのです。

これは、類(たぐ)い希(まれ)に優れた、ありがたい習慣です。

この習慣が、ケジメの心・忠孝の心・他を貴ぶ心・勤労の精神・・・・

といった、大和心を育んできたのです。

一旦、人がこのことに気づき、心を注ぐことができたならば、

「靴を揃える」ということが、どんなに生活の中で大切な所作であるか理解できます。

例えば、

 「今日は何もしなくてよい」

となると、人は何をするでもなく、すべき事を先送りし、ダラリと時間を過ごしてしまうものですが、

たった1つ

 「今日は4時に買い物に行く」

と決めるだけで、その前後の時間がリズムを産み出し、スピーディーになります。

竹に節があり、強いしなりを産み出すように、私達の生活はそれぞれのシーンに節目を創出する事で

生活を律する事が出来るのです。

そういう意味からも、私達はありがたい習慣に満ちているとも言えます。

玄関で靴を脱ぎ、キチンと揃える。

ということは己を律し、ひいては大和心を陶冶(とうや)することに通じているのです。

「靴そろえ」をおろそかにし始めた戦後育ちが日本文化を希薄にさせ、

ポテンシャルを低下させたのです。

今改めて、「靴そろえ」の意義深き事に気づかなければなりません。

 

大和心(魂)とは何か!  日本人の魂とは!  大和の心が失われている!

と叫び、論ずる前に、さっき脱ぎ捨てた靴を揃える事です。

それが大和心であり、この時空にふさわしい生き方です。

さあ

今日も明日も、感謝の心で靴を揃えましょう。

 

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