人の幸せを祈る

キチンと崩れる家に住む
 

安部浩之作品NO,090408
                                文・Phot,Kohsi

 

多くの建設会社・建材メーカーが林立する中、

強度面・断熱・耐久面などが重視され、様々な建材が開発されています。

 

その開発の根底にあるものは、「より快適な生活のために」です。

しかし、その快適な生活とは「人間を中心」としたものにほかなりません。

その結果、人は環境のみならず人体にも多くの負荷を残しつつあります。

有名な例としてアスベスト(asbest・石綿)があります。

アスベストは、その素材の持つ、特性が評価され、

建設資材のみならず、電気製品、自動車、家庭用品等、様々な生活用品に使用されたのです。

しかし、空中に飛散した石綿繊維を肺に吸入すると肺癌や中皮腫(ちゅうひしゅ)の病気を引き起こし、

2020年までには死亡者が50万人を超すとも言われています。

 

地球・人体への無知をも無視して、

安易に経済主導・利益主導で取り込んだ人災と言ってもよいでしょう。

本来、人の住む「住居」は、木も瓦も石も、その周囲にある素材のみを使い、造られるべきなのです。

そうすることで何が良いかというと、

同化・ 循環がたやすくなる。

ということです。

「家屋もたやすく循環」してこそ、その役を最後までキチンと全うするようになるのです。

つまり 「キチンと崩れる家」 が良いのです。

これは、決して、強度の弱い家が良いということを言っているのではありません。

強度ではなく、むしろ「循環」です。

聖徳太子、建立なる、世界最古の木造建築「法隆寺」は、

木組みを基本として鉄釘は必要最小限に抑えられ(下記注1)、仮に崩壊しても、

その土地に、たやすく同化(=循環)するものばかりです。

でありながら、1400年間微動だにしていません。

これは現在のハウスメーカーが謳う100年住宅や3世代住宅をはるかに超えた年数です。

 

地球中心で「住まい」を省みる

結局、私達は、戦後の高度成長の中で、

夏は涼しく、冬は暖かく、抗菌・殺菌と微生物を敵にし・・・・・

と「人の五感」を軸として生活を一変させ、今もその方向へ邁進しているのです。

人は、この愚かさに気づかなければなりません。

この愚かさに気づくと、私達の住まいは少なくとも、以下の事が言えます。

 

 ・「住まい」は、水・空気を遮(さえぎ)り、多かれ少なかれ、循環する環境を阻害するのであるから

  「今日も、火事もなく、寝食する空間をいただいて有り難うございます。」

  と建物と地球に感謝する。

      ※ 私は年に1度(2月3日)、床下にバケツ1杯の水を撒きます。

        本来、家屋にとって水はタブーです、腐敗も早くなるでしょう。しかし、どの地も一様に

        水を望んでいるのです。家屋のある大地に感謝してこそ、家屋への謝意は通じるのです。

 ・糞尿・残飯は可能な限り近いエリアで循環させる。

 ・建て替えの前に、リフォームも一考する。

 ・可能な限り自然素材の家材を選択する。

 ・コンクリート造よりも木造の方が循環がたやすい。

   等々です。

 

こうして、循環が人の視界に入ることで、他項でも記した通り、人は優しくなるのです。

逆に循環が見えなくなると、そこに「巡り」がないので、自己中心・我よし・競争・・・へと向かうのです。 

 

本来、地球から産まれた人間である以上、その日常生活も、「循環」を好むのです。

中国五行説で言えば五行(木・火・土・金・水)の、「相剋(相克)」と「相生(支え合う)」の関係が整い、

健康しかり、お金しかり、いわゆる「巡り」が良くなるのです。

「住まい」は、日々の生活に直結しています。

それだけに、私達は、ブームや機能にこだわる前に、一度、発想をリセットして、

「循環」という視点を軸として、住まいを見直す必要があるのです。

 

(注1、法隆寺は「釘1本使われずに・・・」という風評もありますが、実際は、断面の四角い和釘が、適材適所に使用されています。(東北大学総合学術博物館に実際の釘が収蔵されて います。画像はココ

    

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