キチンと崩れる家に住む |
多くの建設会社・建材メーカーが林立する中、 強度面・断熱・耐久面などが重視され、様々な建材が開発されています。
その開発の根底にあるものは、「より快適な生活のために」です。 しかし、その快適な生活とは「人間を中心」としたものにほかなりません。 その結果、人は環境のみならず人体にも多くの負荷を残しつつあります。 有名な例としてアスベスト(asbest・石綿)があります。 アスベストは、その素材の持つ、特性が評価され、 建設資材のみならず、電気製品、自動車、家庭用品等、様々な生活用品に使用されたのです。 しかし、空中に飛散した石綿繊維を肺に吸入すると肺癌や中皮腫(ちゅうひしゅ)の病気を引き起こし、 2020年までには死亡者が50万人を超すとも言われています。
地球・人体への無知をも無視して、 安易に経済主導・利益主導で取り込んだ人災と言ってもよいでしょう。 本来、人の住む「住居」は、木も瓦も石も、その周囲にある素材のみを使い、造られるべきなのです。 そうすることで何が良いかというと、 同化・ 循環がたやすくなる。 ということです。 「家屋もたやすく循環」してこそ、その役を最後までキチンと全うするようになるのです。 つまり 「キチンと崩れる家」 が良いのです。 これは、決して、強度の弱い家が良いということを言っているのではありません。 強度ではなく、むしろ「循環」です。 聖徳太子、建立なる、世界最古の木造建築「法隆寺」は、 木組みを基本として鉄釘は必要最小限に抑えられ(下記注1)、仮に崩壊しても、 その土地に、たやすく同化(=循環)するものばかりです。 でありながら、1400年間微動だにしていません。 これは現在のハウスメーカーが謳う100年住宅や3世代住宅をはるかに超えた年数です。
地球中心で「住まい」を省みる 結局、私達は、戦後の高度成長の中で、 夏は涼しく、冬は暖かく、抗菌・殺菌と微生物を敵にし・・・・・ と「人の五感」を軸として生活を一変させ、今もその方向へ邁進しているのです。 人は、この愚かさに気づかなければなりません。 この愚かさに気づくと、私達の住まいは少なくとも、以下の事が言えます。
・「住まい」は、水・空気を遮(さえぎ)り、多かれ少なかれ、循環する環境を阻害するのであるから 「今日も、火事もなく、寝食する空間をいただいて有り難うございます。」 と建物と地球に感謝する。 ※ 私は年に1度(2月3日)、床下にバケツ1杯の水を撒きます。 本来、家屋にとって水はタブーです、腐敗も早くなるでしょう。しかし、どの地も一様に 水を望んでいるのです。家屋のある大地に感謝してこそ、家屋への謝意は通じるのです。 ・糞尿・残飯は可能な限り近いエリアで循環させる。 ・建て替えの前に、リフォームも一考する。 ・可能な限り自然素材の家材を選択する。 ・コンクリート造よりも木造の方が循環がたやすい。 等々です。
こうして、循環が人の視界に入ることで、他項でも記した通り、人は優しくなるのです。 逆に循環が見えなくなると、そこに「巡り」がないので、自己中心・我よし・競争・・・へと向かうのです。
本来、地球から産まれた人間である以上、その日常生活も、「循環」を好むのです。 中国五行説で言えば五行(木・火・土・金・水)の、「相剋(相克)」と「相生(支え合う)」の関係が整い、 健康しかり、お金しかり、いわゆる「巡り」が良くなるのです。 「住まい」は、日々の生活に直結しています。 それだけに、私達は、ブームや機能にこだわる前に、一度、発想をリセットして、 「循環」という視点を軸として、住まいを見直す必要があるのです。
(注1、法隆寺は「釘1本使われずに・・・」という風評もありますが、実際は、断面の四角い和釘が、適材適所に使用されています。(東北大学総合学術博物館に実際の釘が収蔵されて います。画像はココ)
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