人の幸せを祈る
 
思念は円環連鎖(循環)する  
 

安部浩之作品No,090420
                                   文・Phot,Kohsi


 

地球が循環の下(もと)に成立している通り、「思念」の世界も同様です。

「心の向き」も連鎖・循環しています。

例えば、仏教においては、「十如是」(※下記 注1)という教義があります。

いわゆる 「相・性・体・力・・因・縁・果・報・本末究竟等」

の10のパーツで、これは、現実世界の事象を10のパーツで説明したものです。

その意味は

 1,相(形の相)
 2,性(本質・本性)
 3,体(形体)
 4,力(エネルギー・能力)
 5,作(作用)
 6,因(直接的な原因)
 7,縁(条件・間接的な関係)
 8,果(因に対する結果)
 9,報(報い・縁に対する間接的な結果)
 10,本末究竟等相(相から報にいたるまでの9つの事柄が究極的に無差別平等であること)

で、それぞれが感応連鎖するとします。

また、コミュニケーション理論を構築したイギリスのベイトソンによると

「円環的認識論」と呼ばれる論の中で「ある人物の行動が次の人の行動に影響を及ぼし、さらに

それが第3の人に影響を及ぼす・・・」とし

  直線的な因果系列は、大きな円環をなす因果系列の1部でしかない・・・

としました。

これらは、とても示唆に富んだ内容で、私達の日常生活においても、

このように思念が動いています。

特に大切なポイントは、思念が伝播・連鎖するのみならず、その作用が円環連鎖するということです。

下図をご覧下さい。  

 

例えば、父親が子に対して

その子の長所である「優しさ」を感じ、思念し、実際に「やさしいね」と言ったとします。

すると、その子は、嬉しくなりますが、単純に「父さんも優しいね」と言うとは限りません。

ある子は、父親の長所である

  ・「決断力あるよね〜」かもしれませんし、

  ・「仕事、御苦労さん」かもしれません。

つまり、1つの言葉(かたち)となったものを単純に返すのではなく、その「向き」を返そうとするのです。

友人同士でも同様です

  「あなたの目キレイね〜」

と言われれば、良い部分を見てくれた、と思い

  「あなたの口元こそキレイよっ」

となります。

ここで「長所を見る」という「向き」が、双方向で展開します。

さらに、これで事態は終わりません。

大局的に見ると、十如是論やベイトソン(上記)が言っている通り、

思念は円環しようとしますから、父と子の循環を母親や祖父母・社会を巻き込んで

円環運動として展開しようとするのです。(ミクロな円環はマクロにスライドし円環しようとする)

つまり、この思念の運動法則を使うと、いろいろと工夫が出来ます。

不孝にも妻は、

「旦那は、何の取り得・長所も見つからない、とんでもない夫だ、結婚は失敗だ」

と強く思い、とても優しい言葉なんて掛けたくもない。という心境だったとします。

そういう場合でも、子供なら見つけられる、というのなら

妻が子に対して、長所を見つけ、言えば良いのです。

その「向き」が父親にも遠因的に放射されるからです。

かくして、妻は2次的ではあるが父親の長所を見つけ、言った

ということになります。

しかも、ここには無理がありません。

  ※ 無理して長所を見つけ出すと、それはストレスを産み出し、逆に、ストレスが伝播することになります。

家族でも職場でも、友人関係でも

顔をヒクヒク引きつらせて、「あなた優しいわね」と言う必要はありません。

少し考えてみて、この人ならという人に素直にストレートに長所を伝える

それで良いのです。こうして見ると次の3点がポイントになります。

  ・無理をしない(無理はストレスを産み出す)

  ・好きな時、好きな人に・・・から始める

  ・思念は円環すると理解する(念じる必要はない、法則だから理解するだけでよい)

ぜひ、おためし下さい。意外な展開がそこにはあります。

 

 

注1 十如是について
この十如是は、『法華経』の一説である。ただ、訳出した鳩摩羅什(くまらじゅう)本にのみ見られるもので、他の訳や梵文(サンスクリット語)原典には見当たらない。私的には、鳩摩羅什のオリジナルであると解釈する。この十如是は、後に天台教学の究極とまでいわれる「一念三千」を形成する発端とされており、日本仏教の根幹となる教理である。天台大師・智は
・「是の相も如なり、乃至、是の報も如なり」
・「是の如きの相、乃至、是の如きの報」
・「相も是に如し、乃至、報も是に如す」
として、十如是を三分類し「空・仮・中」の三諦(さんたい)として配し解釈した。
これを仏教教理では、三転読文(さんてんどくもん)という。

注2 ベイトソンについて
グレゴリー・ベイトソン(Gregory Bateson, 1904年5月9日 - 1980年7月4日)、イギリス生まれ、第二次世界大戦中にアメリカ合衆国に渡り、人類学・社会学・言語学・サイバネティックスなどの研究者。イルカのコミュニケーションの観察や精神病院でのフィールドワークから、「ダブルバインド」という概念で象徴される独自のコミュニケーション理論を構築した。「知の巨人」と評され、評価も多岐にわたる。最も大きな功績を残した分野は精神療法。氏は分裂病をコミュニケーションの障害として捉えた。(関連サイトはココ



 

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