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童話 神様のキャンパス 1


                          

神様は、
ついに
願った通りに
とても大きなキャンパスを手に入れました。
それは、ホレボレするような、
とても立派なイーゼルとキャンパスでした。

まず背景から
そして植物、生き物と・・・・・
時間をかけて
案を何度も練り直し
ゆっくり、ゆっくりと描いていきました。

イルカは、あの星にある、あの形にしよう。
カラスは、あの星にある、あの色にしよう。
土は、あの星とあの星の石をまぜよう。

もう完成か?
と思っても納得出来ないと
全てを真っ白に消して
書き直しました。

でも
何か足りないな〜
といつも心の中に引っかかりがありました。
何年も何年もかかりました。
20億年経った時、
最初に書いた絵が薄くなったり、くすんだり、にじんだり
している事に気づきました。

こんなに立派なキャンパスなのに、
もったいないな〜、つまらないな〜
と思いました。
キャンパスを捨ててしまおうかと思ったこともありましたが
あきらめませんでした。

でも、そこで気づきました。
そうだ、この絵の生き物が、新しく生まれ変わるようにしたら・・・
そうだ、生き物が子供を産んで、育てて、増やす・・・
そうだ、1つの生き物だけが、増えすぎて絵のバランスが崩れないように生き物が生き物を減したり、おぎないあったりしよう

そうすると
絵はいつも違う姿になり、毎日、見るのも楽しい
変化が楽しめるぞ・・・・

もう、こころはワクワクでした。
気がついたら、さらに20億年かかっていました。
絵を描き始めてから40億年以上かかっていました。

こうして
いよいよ最後の仕上げとなりました。
神様はそこに
自分の姿を描いて、「人間」と名前をつけました。
さて、さて
この人間はどうやって増えるようにしようかと
ここに
一番悩みました。

他の生き物は、
風の力でふえたり、虫の力でふえたりしましたが
人間はもっともっとスゴイもので増えるようにしたいと思いました。
これに
何億年も悩みましたが、ついに、いい案が浮かびました。
その案は、最後の仕上げにふさわしく
見事にキャンパスの絵を
キラキラと輝きのある素晴らしいものにしてくれました。
そのお陰で、絵全体が優しくなり
人間は互いに助け合ったり、他の生き物を助けたりしました。


神様は、人間が

「愛の力」

で結ばれ、増えるようにしたのでした。

こうして、描き始めて46億年たっていました。

                        (2話へ、つづく)
                            安部 浩之 作